2017年7月17日月曜日

オフボール・オフェンス


試合や練習で自分がボールを持っていないとき、ボールをもらおうとしてもパスが来ず、気が付いたら味方の邪魔をしていることはないでしょうか。バスケットボールではボールを持ったときの攻め方よりも、ボールを持たないところでの動きの方が何倍も大切なのです。バスケットボールの上手な選手は、必ずボールのないところでうまく動きます。このボールを持たないオフェンスのことをオフボールオフェンスと言います。

動き方がわからない

ボールが欲しい
オフボールの動きがよくわかっていない場合、おもに2種類のことに陥りがちです。
 (A)動き方がわからなくて、ただ立っているだけ
 (B)とにかくパスをもらおうとがむしゃらに動き、とくにボールの近くに行きがち
(A)の場合、カッティングやスクリーンを試みましょう。とくにスクリーンプレイは最低でも2人が動きますし、スピードなどで振り切るばかりではないプレイですのでオススメです。
このケースになりやすいのは、自分が主体的にボールを持ってプレイしたいと思っていないタイプが多いです。スクリーンプレイであれば、ほかのプレイヤーをフリーにするために、積極的に動きましょう。また、自分が得点できるパターンを1つでもつくって、その形をつくれるように工夫することも大切です。
(B)の場合は、特に注意しなければなりません。
このケースになりやすいのは、得点力に自信があったり、ボールによく触りたかったり、とにかくオフェンスに関わりたいタイプです。もし、こういうケースに当てはまっている場合、チームオフェンスのリズムを崩したり、ほかのプレイヤーの攻撃機会をつぶしてしまっていることを自覚しましょう。
さきほども書きましたとおり、攻めるにはスペースが必要です。そのスペースを確保するためには、少なくとも半径3mの円のなかに味方がいないことが大切です。そうでないと十分なスペースがなく、1対1を仕掛けてもディフェンスが集まりやすかったり、シュートやパスをスティールされてしまいます。つまり、ボールに近づくことによって、ボールマンはシュート、パス、ドリブルのすべての機会を奪われている、ということです。
ボールマンが仕掛けようとしている場合、その仕掛けから生まれるチャンスに備えた動きをしましょう。時には、動かずに十分なスペースを取って待っていることも必要です。攻撃が始まったら、パスをもらえる位置に動き直して、ボールが来るのを待ちましょう。パスが欲しいばかりに、ボールに近づいて、自分をマークしているディフェンスに簡単にヘルプに行かせるようなことはしてはいけません。このように、時に「動かない」ということも、重要なオフボールのセレクションの一つなのです。

邪魔になってしまう
パスをもらおうとして動いたら、ドリブルしてきたプレイヤーとかぶってしまう。動いたら、ほかのプレイヤーと同じところへ行ってしまった。動き方がわからなくて立っていたら怒られる。こうした経験はないでしょうか。
バスケットボールでは、オフボール(ボールのないところ)での動きも大切です。ボールは1つしかなく、ボールを持っているプレイヤーが1人なのに対して、オフボールのプレイヤーは4人ですから、単純に計算すると、オフェンスの時間のうち、80%はボールを持っていない、ということです。オフボールで効果的に動けないということは、オフェンスの時間のほとんど、何の役にも立っていないのと同じなのです。ただ、役に立たたないだけなら、少しはマシかもしれません。それどころか味方とかぶってしまったりすれば、邪魔になってしまいます。
バスケットボールではボールを持った状態でのシュート、パス、ドリブルはとても大切ですが、オフボールでも効果的に動けていなければ、よいプレイヤーにはなれないのです。それではまず、邪魔にならないように、動くべき場所がわかるようになるには、どうしたらいいのでしょうか。
ボールマン①の方向へ②が動くと、ボール付近に敵味方4人が集まって、1対1どころかパスもできなくなります。 1対1は周りが広い方がやりやすいので、ボールから遠ざかる方が良いプレーとなります。また、ボールが欲しい場合は、元の位置に飛び出してボールをもらうことができます。 一般的に、ボールに向かう動き(ボールミート・フラッシュ)、ボールから遠ざかる動き(フレアカット)、リングに向かう動き(カットイン)、リングから離れる動き(カットオフ・ポップアウト)、スクリーンの5つの動きから可能で適切なものを使うことになります。

ボールを持っていないときの動き方の基本
オフザボール(ボールのないところ)の動きには基本があります。 これを知らないと、仲間と同じ所に動いてしまって邪魔になったり、動く場所がわからなくてその場で止まっていて指摘されたり、チームとしてバラバラになり、ボールを持ったプレイヤーが1対1を仕掛けるだけのオフェンスになってしまいます。
より具体的な動きはチーム戦術と合わせて確認するのですが、基本は覚えておきましょう。

上記の表は、オフボールオフェンスの動きを示したものです。動きの分類と一番左が目的です。この中で注意して頂きたいのは、一番右の「目的」の欄に、「ボールをもらう」は3つしかないということです(トレイルプレーを入れると4つ)。動きの方向の自由さから考えると、ボールを要求するプレーは4回に1回位で、実際にパスが来るのは5回に1回位でしょう。ボールをもらわない場合(もらえない場合ではない)の動きの目的は、スペースを作る・使う、スクリーンを作る、クリアアウト(カットインなどのコースを作る)の3通りになります。これらのプレーは、味方がシュートするための手助けです。
オフボールオフェンスを理解し、判断し、動くことは、個人の能力向上だけでなく、チームオフェンスからチームプレーになっていくものです。
とは言っても、今のプレーはどこが悪かったのか、どうしたら良いのか分らないひとがおられると思います。下表は私が作ったとりあえずどうしたら良いかを示した表です。利用して下さい。

スペースの作り方
動くべき場所は、スペースのあるところです。
スペースというのは、シュート、パス、ドリブルといったプレイをするときに、ほかのプレイヤーが邪魔にならない(つまり誰もいない場所のこと)空間を指します。たとえば、ほかのプレイヤーの真横に動いてしまえば、ディフェンスもついてきて、同じ場所に4人のプレイヤーがいることになります。これではドリブルで仕掛けることはほとんど無理ですし、シュートやパスもスティールされやすくなります。
このスペースを考えるとき、基準になる距離があります。よいスペーシングができているとき、それは5人のオフェンスプレイヤーがそれぞれ3~5m以上離れている場合です。まずは実際にラインの引いてあるコートで、この距離を体感してみてください。大股で1m位です。
動き方やスペーシングに問題を抱えているチームのほとんどは、この距離を保てていません。せっかくのハーフコートを、とても狭く使っているため、攻めづらくなってしまっているのです。スペースを探して動くときは、このスペーシングの原則を守ってください。
チーム全体のスペーシングが悪いときは、自分だけでなく、ほかのプレイヤーのポジションも修正する必要があります。こうしたスペースを探したり、ポジション修正をするために重要なのが、コート全体を見ることです。首を振ってコート全体を確認し、それぞれのプレイヤーがどのくらいの位置関係にいるか、スペースはどれくらいあるか、をチェックするのです。 動く場所がわからないという場合、たいていはコート全体の把握ができていません。オフボールではボールをディフェンスに取られる心配もないのですから、オンボールのとき以上にコート全体に気を配りましょう。

声を出す・ボールを呼ぶ
スペースを見つけたら、今度はパスをもらう準備をします。
ただ立っていてもパスはもらえません。もらえるとすれば、自分がシュートを打てない距離だったり、ディフェンスに脅威を与えられない場所です。シュート、パス、ドリブルのすべてができる状態(トリプルスレット)でボールをもらうためには、ディフェンスを外す必要があります。ディフェンスが外れていれば、ボールマンは安心してパスを出すことができます。ボールを呼びこむことができるのです。
ディフェンスを外すのに必要な技術は、カッティングとスクリーンです。
でも、絶好のタイミングで動いたとしても、パッサーが気づかなければパスは来ません。スペースに入った時にはボールが来ているように、少し早く声を出しましょう。試合会場では色々な声が飛び交いますので、他の声に負けないように大きな声を出さなければ意味がありません

パスが来ない・パスが回らない
よくないチームにありがちなのは、パスが回らないことです。たとえば、ヘルプが来たときなどに、強引に行ってしまってパスが出ない、というようにです。あるいは、ボールマンが攻めにくくなっているにもかかわらず、パスして状況を変えようとしない、ということもあります。これは、ボールを持っているプレイヤーが身勝手だから起こっていることでしょうか。もちろんそういったこともあるでしょう。しかし、パスが回らない原因は、ボールマンだけにあるとは限りません。
ここに2つのチームがあるとします。1つは、パスをたくさん回してフリーになれたプレイヤーがシュートを打つチーム。もう1つは、ボールを持ったプレイヤーが最後まで攻める場合がほとんどのチーム。あなたは、どちらのチームに入っても同じようにプレイするでしょうか。
おそらく、前者のチームになれば自分がシュートを打ちたくてもパスを回すはずです。これは、パスを回したとしても、自分がフリーになればシュートを打てるからです。一方、後者のチームになればボールを持ったら離さず、どんな状況でもシュートに行こうとするでしょう。これは、一度パスしてしまうと二度とボールには触れられず、シュートは打てないからです。
ボールマンがパスを出さないのは、ほかのプレイヤーもパスをしないからです。特定のプレイヤーのみに原因があるわけではなく、チーム全体の問題なのです。

フロアバランスについて
フロアバランスとは、コートのなかで人がどういうポジションにいるか、ということです。たとえば、基本的なポジションとしてトップ、両ウィング、ポストに2人います。このポジションではそれぞれにスペースがある程度あり、距離感も遠すぎません。こうした全体のポジショニングは「フロアバランスがよい」ということになり、攻めづらさを感じることは少ないです。
「動こうとすると、仲間とかぶってしまう」「狭くて攻めづらい」と感じるときは、フロアバランスが悪くなっています。「どこに人がいて、どこにスペースがあるのか」を考えながら動くことができれば、フロアバランスがよいまま、攻めることができるのです。
こうした「フロアバランスを整える」動きは、オフェンスの技術として、とても大切です。
しかし、常にフロアバランスがよい状態が、攻めやすい状態であるとは限りません
たとえばバスケットボールのオフェンス戦術に「アイソレーション」があります。ほかのプレイヤーが逆サイドに固まったりすることで、1対1の強い1人のプレイヤーに大きなスペースを与える戦術です。アイソレーションでは、まったくフロアバランスがよいとは言えません。
このように、「あえてフロアバランスを崩す」ことで、オフェンスの突破口を見つけ出そうというプレイもあります。 ゾーンディフェンスに対するオフェンスも同じで、あえて近いところにオフェンスプレイヤーをおくことで、数的優位をつくって攻めやすくすることもあります。
多くのディフェンスはフロアバランスの整った形が一番押さえやすくなっています。特にゾーンディフェンスは、オフェンスの配置が左右対称であることを前提としています。
フロアバランスは単に整えるばかりでなく、あえて崩すということも必要になるのです。動きを考えるとき、このフロアバランスということを頭に入れおいてください。

パスをもらえない人が注意すること
上記のことを守っているのにパスがもらえない人は次のことを考えて下さい。 パスをもらうためには、もちろんオープン(ディフェンスのマークが外れたフリーの状態)であることは大切ですが、それ以前の重要なことがあります。
それはチームメイトからの「信頼」です。
こんな経験はありませんか?
練習や試合で、レベルの高い人と低い人が混ざったチームにいる。ボールを持っているとき、レベルの高い人に優先的にパスを出してしまう。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。 理由は、
・レベルの高い人なら、ボールを奪われる心配が少ない
・レベルの高い人なら、状況に応じてシュートやドリブル、パスを適切に判断してくれる
などと考えるからです。
これが「信頼」です。
「あなたは、チームメイトにとって信頼に足るプレイヤーですか?」 この質問は、次のように言い換えると自問しやすいでしょう。
「あなたは、簡単なミスをしたり、シュートは打つけれどまったく入らない、といった自分中心のプレイをしていませんか?」
自分のミスや悪いところに目を向ける質問ですので、避けたいかもしれません。ですが、これを問わないと始まりません。
いくらオープンになる技術を磨いても、チームメイトの信頼がなければ、あなたが思ったとおりにパスはもらえないでしょう。ふだんの練習から、チームメイトに信頼してもらえるようなプレイをしているか、信頼を失うようなミスやプレイをしていないか、見直してみてください。コーチが「信頼できない選手」と判断した場合は、試合に出る機会は激減するでしょう。
もし「ちょっとまずいかも」と思うなら、直しましょう。
・ミスを減らすこと
・チームに貢献できるようにプレイすること

これらを心がけてプレイすることで、チームメイトからすこしずつ信頼されるようになるはずです。

ビジョンエリアとブラインドエリア
ボールマンからパスをもらう場合、2種類の「スペース(場所)」について知っておかなければなりません。それは、
・ブラインドエリア
・ビジョンエリア
です。
ブラインドエリアとは、ボールマンが見えないスペースのことです。たとえば、ボールマンがカットインして、ディフェンスがヘルプに来たとき、ヘルプディフェンスによって遮られた視角を見ることはできません。
ビジョンエリアは反対に、ボールマンが見えるスペースのことです。コート上から、ブラインドエリアを差し引いたものが、ビジョンエリアになります。 この説明からわかるとおり、ボールマンからパスをもらうためには、ビジョンエリアにいなければなりません。
これが、意外とできないのです。
ボールマンがカットインして自分のマークマンがディフェンスにいったとき、ミドルシュートなどを打とうとしてディフェンスの裏側に動いていませんか?ほとんどの場合、ボールマンはあなたを確認することができません。もし一瞬見えたとしても、その後の状況がわからないため、パスするのをためらうでしょう。
あなたがカットインしたプレイヤーからパスをもらえない場合、まずブラインドエリアにいないかを確認する必要があります。ビジョンエリアにいることが、パスをもらうための最低条件だと覚えておいてください。ですが、これだけではパスをどんどんもらうことはできません。
もう1つのことに注意しなければ、カットインしたプレイヤーはあなたにパスを出すことをためらうのです。では、1つ考えてみてください。カットインしたプレイヤーがパスを出そうと思ったとき、一番恐れるのは何でしょう?
答えは「パスカット」です。あまりにも当たり前の答えで、驚いたかもしれませんね。カットインしたプレイヤーは、パスカットを恐れます。それは、この状況でのターンオーバーはほぼイコール、速攻を意味するからです。バスケットボールにおいて、ターンオーバーと速攻は、できる限りなくさなければいけないミスです。その両方をみすみす犯すようなマネは、だれだってしたくありません。
ですからカットインしたプレイヤーは、パスを出す相手として、もっともパスカットされないであろうプレイヤーを選びがちです。 チャンスになるかどうかは、2の次になってしまいます。
このことからも、あなたがチャンスメイクをしようと裏に動いても、パスが確率が低いことがわかるでしょう。ですから、あなたはカットインしたプレイヤーからパスをもらうために、
 ・ビジョンエリアにいること
 ・パスカットされにくい所にいること
の2つが重要なのです。 このあたりは、ビジョンエリアを意識すれば、すぐに動けるようになるはずです。
むずかしいのは、トップ付近(バスケットの正面に近い所)にいて、自分のマークマンがヘルプにはいかず、2線気味にディフェンスした場合でしょう。この場合、定石となるのは、ボールマンがカットインした方向側のウィング側に寄るという動きです。
この動きをすれば、カットインしたプレイヤーの前方視野(正面を向いた状態のまま見られる視角)に入ったままでいられますし、マークマンの背中側に動くことになるため、ボールマンとしてもパスカットの心配が減ります。もちろん、これは各プレイヤーがよくある動きをした場合ですので、状況によってはこの限りではありません。たとえばトップ付近にいて、自分のマークマンがかなりヘルプ寄りにディフェンスした場合は、むしろカットインとは逆サイド側のウィング側に寄って、インサイドアウトのようなプレイを目指した方が、いいこともあります。
 ・ビジョンエリアにいること
 ・パスカットされにくい所にいること
を念頭に置いて、プレーしてみてください。

オフボールオフェンスを動かす練習
エルボーとローポストの2対0から2対2
オフェンスのエルボーから始める。動ける場所はエルボーとローポストの4ヶ所。ドリブルなし。最初はディフェンスなしで行い、動きが分かったところでディフェンスを入れる。ディフェンスは普通につく。オフボールオフェンスは、動かないとボールをもらえないので、空いている場所に動いてボールをもらう。これを5~10本程度繰り返してからシュートする。シュートは場所を問わない。


6か所の3対0から3対3
上の2対2と同じルールで動くが、6ヶ所のスペースを3人で動くことになる。今度はオフボールオフェンスが2人になる。パスをする人・ボールをもらう人・どちらでもない人の3種類の選手がいることになる。お互いに協調しながら動くことになる。状況判断をしなければならない。また、動きも複雑になるため、声を出さなければならない。攻撃するスペースを作ったりスクリーンをしたりして、味方の攻撃のサポートをするために自由に動きを要求する。

アウトサイドの3対0から3対3
上と同じルールで動くが、今度はアウトサイドばかりなので、連続したカッティング技術が中心となる。カッティング技術でアウトサイドを動くが、同じスペースに重なった時は、後から来た人がスクリーンをすることを基本とする。同時に複数のオフェンスがリング近くにいないこと、カットインした場合はすぐにカットアウトすることなどを注意することと長いシュートを狙うことが必要である。


ハーフコートの5対0から5対5
ウイングの合わせの練習である。ドライブインから、前方、斜め、横、後ろに動く。実際には、全員が合わせの位置に動けることはなく、セフティー等の必要なプレーにまわることになるが、声を出して知らさなければならない。慣れてくればディフェンスをつける。
トップの合わせの練習である。例は右手側を抜いたところである。ショートコーナーの選手の動きは、自分のディフェンスがカバーに行ったときの動きである。
 カバーが来て閉じられたコースに詰まってからではパスが出しずらい。視野を保ってカバーの選手の動きの逆をつくようにパスするのがよい。また、カバーが来た方向へ合わせるのが原則であるが、ローテーションでインターセプトを狙いにくる場合もあるので大きな声を出して知らせなければならない。





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